騎士と塔の姫 03
「初めまして、今日よりここに勤務することとなりました。第3神聖騎士団の2班、シュトナ・バークードと申します。」
よろしくお願いいたします。とそう言って頭を下げた先にいるのは、監視を勤めることになった牢の人たちだ。無論囚われているのではなく、共に監視を行う人たちだ。
自分を覗いて4人。教会に随時勤める騎士達のようなしっかりとした鎧ではなく、軽く、そして部分部分に取り付けて着るようなタイプの軽装の男達。
見たことのある顔が2名ほど。その顔を見て顔を顰めそうになるのを押し込めて無表情を決め込む。
けして良い印象を持っている人ではなかった。他にいる2人を見ても同様だ。
ここに現在居る騎士は自分を含めて5名。この前までは人の良い先輩がここに居た。自分がここに来ることになったと報告したときに言われたことを思い出す。
「半年、か。お前にはあそこは向かない。少なくとも私は耐えられなかった。…──がんばれよ」
がんばれ、とはどういう事か。仕事内容は監視で、それほど過酷な仕事には思えない。何故そんなことを言うのか不思議に思ったが、もしかしたらこの人達のことかも知れない。と、頭の隅で思う。
「第3か、まぁ気楽にな」
「これはまた、頭の硬そうな奴が来たな」
「どうせ後半年だ、どんな奴だろうと変わらないさ」
「適当に頼むわ、新入り」
思わず顔を顰めれば、気にもせずにここの説明をし出す。
どうやら見覚えのない二人は教会に雇われているだけらしい。罪人と接する監視に部外者を置いている、そのことにまた違和感を覚える。
ここはいったい何なのか。確かに、ここは自分には向いていないことだろう。
何故自分がここに寄越されたのか良く分からない。
「あんま深く考えんなよ」
ふと声を掛けられ、さらに眉を寄せる。
「何故自分がとか考えてんだろ?」
「ここに来た奴はまず始めにそう考えるからな」
鼻で笑いながらそう言う。この人達に不信感が募るのに時間はいらなかった。
牢という、この場所に何故この人達のような人種が使わされているのかも分からない。いや、このような場所だからこそなのか。
「お偉いさんが適当に毎回決めてるから、意味なんか無いんだがな」
そう落とされて、言葉が止まる。意味がない、か。何故か強く、その言葉が頭に残った。
自分がここにいることに意味はない。誰でも良いのだ。
そしてこの後、彼は塔の一番上。
小さな空を見上げ続ける少女に出会う。